「いくら用意したらよいのだろう??」
飲食店に限らず、独立して自分の城を築きたいとお考えの方なら必ずといっていいほど悩むのはズバリ「お金」その中でも開業の資金についてお話していきたいと思います。
1.開業費用の平均はいくら?
- 開業費用目安として言われているのが、坪60~80万として小規模店(15~20坪)で1,000~1,500万かかるといわれております。
- 日本政策金融公庫の「2018年度新規開業実態調査」においても開業費用の平均は1,062万円となっており、全業種の平均値からもおおよそ1,000万は見ておく必要があります。
参考資料:日本政策金融公庫「新規開業実態調査」(2018年)
- 私がお手伝いしているカフェの例では約22坪で大体1,000万かかっております。但し、この店は家族の所有物件を店舗にしているため、店舗取得費用が掛かっておらず、純粋な設備等の費用です。店舗取得費用として家賃を10万円と設定した場合、大体100~200万の金額がそこにプラスされます。
2.開業時にかかる費用の内訳
まず「物件取得」の費用があります。飲食店に限らず、店舗の開業に必要なものになります。前述のように自己所有もしくは親族所有の物件で行うケースはまれかと思われます。各種飲食店開業セミナーなどに行ったとしても、店舗取得費用は賃貸前提でお話が進められることがほとんどであり、「店舗投資」の費用を抑えようとする場合「居抜き物件」を推奨するケースもあるぐらいです。地方自治体がかかわる「空き家活用」による補助が出る場合(兵庫県加古川市、石川県河かほく市等)もありますのでいろいろな意味で賃貸が一般的となっているようです。
参考資料:加古川市空き家活用支援補助制度
賃料の内訳は
保証金(敷金) | 平均して10か月が相場です(6~12か月の間で設定されることが多い)個人の住居を賃貸する時と考え方は同じく、退去時にはかえってきますが、通常は償却額があらかじめ決まっており、それを差し引いた金額が実際に返還されます。契約時に確認することをお勧めします。 |
礼金 | 関東地方にお住いの方はご存じと思います、敷金と違い返還されません。大体賃料の1~2か月であり、 取らないオーナーもいます。 |
仲介手数料 | 不動産業者に支払うもので、賃料の1か月分が相場です。これも不動産業者によって変わってきます。 |
造作譲渡費 | 「居抜き物件」の場合、前の借主にその譲渡代金を支払うことがあります。これも内容によって様々なケースがあります。 |
前家賃 | 契約日からその翌月分を最初に払うことが多いです。但しオーナーとの関係性によっては、フリーレントの交渉ができる場合もあるので契約時に確認しましょう。 |
次に「店舗投資」の費用があります。その内訳は
内装、設計費 | 店舗の内装設計費用です。 |
外装工事 | これは主に駐車場及び看板等の設計、作成、設置費用です。 |
厨房機器費 | 厨房機器の準備費用(購入orリース)です。 |
店舗クリーニング費 | 主に「居抜き物件」の場合にかかるものになります。状況によってはかなり高額になることもあります。 |
備品費 | 食器、ユニフォーム、レジ、PC、プリンター等の準備費 |
販売促進費 | 広告宣伝費用なります(グルメサイト掲載、チラシ等) |
人材募集費 | 従業員の募集費用です。最近は掲載のみであれば無料(indeed)の媒体もありますし、SNSで募集する方法もあるかと思います。 |
ざっと上げるとこのような形になります。
さらに運転資金があります。飲食業の場合、月にかかる固定費の6か月分は必要といわれています。開店当初は目新しさからお客様も集まりますが、2~3週間たつと売り上げも落ちることがよくあります。オープンから黒字が続くということはまれで、半年赤字が続くという店舗も珍しくはありません。運転資金の不足は即廃業につながるのでしっかり確保しておくことをお勧めします。
3.資金の調達方法
- 親や血縁者、親族からの調達
- 友人、知人からの調達
- 日本政策金融公庫の融資制度による調達
- 地方銀行、信用金庫の制度融資(保証協会付き)を用いた調達
- 補助金、助成金の利用
以上の5つの方法が考えられます。
親、血縁者、親族、または友人知人から調達できればとても簡単ですが、気を付ける点があります。金銭の授受についてはしっかり書面化しておくことです。「借金」なのか返済義務のない「支援」であるのかです。トラブルを未然に防ぐことができます。また親、血縁者、親族、または友人知人から調達しても、資金が不足した場合、日本政策金融公庫や信用金庫等の制度融資からの「融資」を利用することになりますので、初めから「融資」で準備することも一つかと思います。
「融資」は日本政策金融公庫と制度融資で多少の違いがあります。日本政策金融公庫は国が100%出資の公的機関であり、制度融資は「信用保証協会」という公的機関が民間金融機関からの融資の保証をするという形になります。どちらも中小企業の少なくないリスクを公的機関がバックアップするものでありますが、片方が公的機関の直接貸付に対し、もう一方は間接的に貸付をフォローする形になります。さらに融資までの期間が日本政策金融公庫で約1か月なのに対し、制度融資は約2~3か月と少し差があります。制度融資に関しては、公的機関の直接貸付では無いため、金融機関と保証協会の2か所で審査を受けるためです。但し、制度融資に関しては地方自治体によって保証料等の補助、金利の優遇を受けられる場合があります。
参考資料:兵庫県中小企業融資制度
補助金、助成金は返す必要のないため、大変有効な調達方法ではありますが細かい条件があり、必ずしも自分の用途に合っているとは限らないのでご自身でしっかり確認するか、専門家等に相談することも検討しましょう。
4.自己資金がなくても開業できる??
最後に時々見かける「自己資金0円から」もしくは「自己資金数万円から」というキャッチフレーズを掲げている飲食店開業支援の会社がありますが、結論から言いますと「絶対ムリ」とは言いませんがかなり難しいといえます。自己資金がないということは「融資」で調達するわけですが、日本政策金融公庫の新創業融資制度の自己資金要件を見ると,
「新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方」となっております(日本政策金融公庫:新創業融資制度の概要より引用)
何事にも例外はありますが、原則は上記のようであり、民間の金融機関もよほどのこと(事業計画案が綿密かつ現実的に実現性のあるもので説得力がある等)なければ同様となります。コツコツと自己資金を準備するという事ができていない人に計画性が求められる事業を続けていくことができると考えるでしょうか。さらにもっとわかりやすく言えば、自分だったらお金を貸せるかという目線で考えるとわかると思います。資金を準備しなければ開業はできませんが、何のために事業をするかを考えれば、計画性は非常に大切かと思われます。もっと言えばしっかりとした事業計画書を作成する必要があると考えます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。開業は思っているより沢山の費用が掛かってきます。したがって創業計画をしっかり立てて、場合によっては書面にし、それに従って開業準備にあたり、さらにコツコツと自己資金を貯め、適切な融資を受けることが永続的に事業を続けていく秘訣となります。安易な考えで「自己資金0で開業」なんてことはくれぐれも考えず、計画を綿密に練る、もしくは創業に詳しい専門家等に意見を求めて自身の夢を確実にかなえましょう。