居抜き物件で飲食店を開業する3つのメリット、4つのデメリット

誰もが一度は考える「独立開業」「一国一城の主」、特に飲食業の方は多いかと思います。
そんな時に皆さんが考えるのは「いくらかかるのだろう」という資金の部分で悩むことがほとんどです。そんな時にアドバイスで聞こえてくる「居抜き物件だと安くて早くできるよ」という話、本当にメリットばかりなのでしょうか。今回はこの部分について説明しようと思います。

1. 居抜き物件とは?

「居抜き物件」とは前のオーナーが飲食店等を営業していた時の内装・設備・厨房機器・キッチンや冷蔵庫などの什器、場合によってはお皿や客席など家具一式すべて残っている物件です。反対に「スケルトン物件」とは内装・設備が何もない状態(コンクリート打ち放し状態)のことです。

違いとして「居抜き物件」は元々誰かがそこで営業としていた状態のため、上手くいけばそのまますぐに営業することができ、内装工事費使わない、あるいは少額で済ませることができます。そのため、開業までの時間も短縮することができます。賃貸物件の場合、当然ですが内装工事をしている間も家賃は発生しますので、早く開店できればその部分の費用も抑えられます。

一方「スケルトン物件」は文字通り「何もない状態」からのスタートですから、内装を設計、設備を調達、その後内装工事、客席等を配置する形となります。したがって個人の経営である小さな飲食店の場合でも、1,000~1,500万ぐらいが「スケルトン物件」での開業の費用となります。
余談ですが当事務所がお手伝いしている店舗(兵庫県加古川市・カフェ)の場合約1,300万かかっております。但しこの店舗は自己所有物件のため、設計費用等が掛かっておりません。賃貸の場合で同様の内装設備ですと、様々な金額が掛かってくる(設計費用等)ためおおよそ100万ぐらい変わってくるかもしれません。

2. メリットは?

メリットは「初期費用を節約できる」「短期間でオープンできる」が挙げられます。このほかにスケルトン物件の場合、思い通りの店舗設計ができる反面、動きの動線など様々なことを考えなければなりません、業者との打ち合わせも何度も行わなければならず、場合によってはオープンまでの時間が長期に及ぶこともあります。その点「居抜き物件」は最小限の変更で済むのでその分他の業務(メニュー開発等)に時間を割くことできます。
後、内容次第ですが、前オーナーのお客様を取り込めるチャンスもあります。(複合ビル等でオープンする場合)新しい店に代わっている場合、ちょっと行ってみようかなと思ったことが、誰しもあると思います。

3. デメリットとして考えられるのは?

① 店内設備は必要な分そろっているか?

ガスや電気等の容量、換気扇等の排気能力が自店の業態あっているのかが重要です。ガスや電気の設備工事は結構高額になります。少しでも費用を抑えるために居抜きにしたのにも関わらず、結果的に0からより金額がかかることもあります。
また居抜きでも前オーナーが別業態の場合はコンセント、ガス管などの位置、排水の場所で今のままで使えるのかを確認しましょう。それらを変更する場合、スケルトンよりもトータルで費用が掛かる場合もあります。
実際にご相談を受けた(結果的に依頼は受けておりませんが)お店で、前のオーナーが呉服店の店に居抜きで入った洋菓子店の場合、お付き合いのある店舗内装工事業者の方から、油排水が多いので配管はやり替えて厨房を作りましょうと提案していただき、融資のお話をさせていただいたのですが、「予算が合わない、そのままの設備で使えるだろう、わざわざ融資の話してもらっても受けるとしても少額でよいし、それぐらいなら頼まなくてもできるだろう。」とそのまま業者のアドバイスも無視をして、オープンをされました。案の定、バターやホイップクリームなど油分のあるものをそのまま排水に流していたために、冷たい水で油が固まり(汚水も流れるところは一か所に合流するので)排水管が破裂、床下浸水を起こしました。ビルのテナントだったため、ビルのオーナー及びほかの店への影響も甚大でした。
結果的に床下清掃、除菌作業、産廃処理等で総額約2,000万かかったそうです。さすがに保険も降りたようですが、1~2割程度のようで、ビルのオーナーもかなり負担したようです。もちろん相談者は自分の店どころではありません。

② 厨房機器はどの程度引き継いで使えるのか??

少しお話がそれますが、居抜き物件というものがなぜ発生するのかというところにつながってくるのですが、「原状回復の義務」です。皆さん忘れがちですが、飲食店は出店時だけでなく閉店時にも費用が掛かります。しかも工事や解約前の空家賃で数百万が必要な場合もあります。そのために居抜き店舗として売却することでその閉店コストを減らす、時には造作売買代金でプラスになることもあります。
したがって、閉店コストを下げるために前オーナーは厨房機器等をそのままにしていくのですが、造作譲渡が無料、有料の場合もありますし、どのくらい設備として使う事ができるのかという事がポイントになります。実際お付き合いのある店舗内装工事の会社の方からよく聞くのが、実際居抜きで入って契約した後に、冷蔵庫を見てほしいといわれ、確認すると動くがとても業務で使う事ができず、結果的に廃棄の費用で幾ら、新しく購入設置で幾らかかるとお話して、結果的に新規に購入するよりも高くつき途方に暮れた例があります。またリース契約が残っており、リース料の契約がきた、あるいはリース会社が機器を持ち帰ってしまうケースもあるそうです。さらに仕方なく処分するにも、最悪壁を壊さないと機器を出し入れできないこともあり、余計に費用も掛かるのでここも注意が必要です。
いずれにしても自分で確かめるべき内容ですし、契約後ではどうすることもできません。多くの場合、不動産会社はこの部分に関してはタッチしないことがほとんどのため、契約前に専門家の確認を仰ぐのも一つです。

③ 内外装はどのくらい使用できるものがあるか???

居抜き物件を使う意味は「初期費用を抑える」ためですから、小幅な変更で開業すべきであり、妥協すべき点、変更すべき点を明確にする必要があります。ココをいい加減にしてしまうと、思った以上に費用が掛かってしまいます。
これも実際のお話なのですが、蕎麦屋の跡地にラーメン屋が入ったケースで似たり寄ったりの業種のため(厨房機器的には)少し改造すればこのまま行けると、私ならできるとオーナーは自分のできる範囲の小幅な変更でオープンをされたそうです。厨房業者さんが個人的に引っかかっていたらしく、「何かあれば相談に乗りますね」と声かけはしていたそうです。すると半年後に「厨房の床に水がたまる」と、見に行くと厨房は水浸し、ゆで麺機、洗い場の水が垂れ流しで床下が沈没している状態だったそうです。厨房だけでなく、壁紙やエアコンなども全く手を入れていなく、次々と壊れていきこの段階で「資金どうにかならないか」と聞かれても、案の定どうにもならず(厳しくなってからの借り入れは難しいです)つぶれてしまったそうです。

④ 前オーナーの撤退理由。

個人的ない理由で閉店した(黒字ではあったが、家庭の事情、収入面で思ったようなものでなかった等)のであれば問題ありませんが、大半は不採算店つまり赤字店です。そうなるとメリット部分で少し触れた、「新しいお店に変わったから行ってみようかな?」ではなく、以前の常連客は習慣として入店して雰囲気の違いを感じ、さらに味が思っていたものでなかった場合、一気にマイナスの印象となりかねません。また、新規客は前の店は知らないが、つぶれたお店の後に入ったところという、マイナスなイメージを持つ場合など、スケルトン物件で一から営業するよりも売り上げが落ち込む傾向があります。
したがってできる限りしっかりとした下調べ(近隣住民等、不動産屋、大家等に確認)、それと同時に新規オープンであることの大々的な宣伝活動をして、悪いイメージの刷新をすべきです。

4. どうやって探す???

上手く使えば、費用を抑えて開業できる居抜き物件ですが、飲食店の店舗物件となると数は少ない傾向にあるので、専門サイトの利用も検討すべきです。いくつか記載します。

アットホーム 賃貸店舗、貸店舗の物件情報 (全国)

飲食店.com(首都圏、関西、東海、九州)

まとめ

いかがでしたでしょうか。資金を抑えて開業するためには有効な手段の「居抜き物件」ですが、いくつかの注意点を抑えずに契約をしてしまうと思わぬ追加投資を迫られます。自身で確認をすることはもちろんのこと、飲食店開業に詳しい専門家に相談することも検討したほうが良いかもしれません。