飲食店を継続することの難しさ、運転資金に困ったときは??

夢の城、すなわち自分の店を持ちたいと思う方にとって飲食店は参入障壁も低く、最も新規参入の多い業種です。しかしながらそれの裏返しで2年以内に約半分の店舗が閉鎖しているといわれております。そんな時によく聞くのが「運転資金が足りなくて」という言葉です。本日は飲食店にまつわる運転資金、その調達方法についてお話します。

1.運転資金って?

まずざっくりしたところでいうと「運転資金が足りなくて」という話は飲食店では起こりにくいです、何故か?それは「現金商売」であるからです。運転資金というものは本来資金ギャップを埋めるもの、つまり支払いと売上の時間的なずれに対応する為の資金です。

次に運転資金が必要な業種としては、売掛金や受取手形が多い業種が該当します。例えば製造業であれば、大企業との取引が多いメーカー等、現金回収までの期間が長いものがそれにあたります。

逆に飲食業は現金商売であるため運転資金の概念が発生しにくいだけでなく、筆者もそうですが、仕入れ代金は買掛金になることが一般的です。飲食店は在庫を比較的抱えなくてよい業種のため在庫資金も少ないことがわかります。

2.飲食店の運転資金の不足とは??

飲食店は大半が現金支払いのため、資金ギャップが生じないから本来運転資金の問題はないと思われます。しかし実際に起こってしまうのです、それは何故か?

例を挙げると人件費30万、家賃10万、変動費率(仕入れや光熱費)30%の場合で損益分岐点を考えると、x=30+10+0.3xとなり毎月約58万円の売り上げがないと営業赤字となり、現金が枯渇するのです、つまり飲食店は黒字に乗せるのが難しいという事です。賃料10万というのは1万/坪の計算で10坪であるため、それより大きい店舗であったり、人件費が上がったりすればますます黒字化は難しいです。

少し話はそれますが、上記で挙げた部分で開業時に気を付けるべきは「人件費」です。従業員が多いお店は見栄えが良く、格好もつき、和気あいあいと楽しいという理由で初めから多くのスタッフを抱える方がいますが、これは失敗の原因につながります。なぜならば「人件費」は売り上げが多かろうが少なかろうが発生するものなので、売上のメドが立たない開業間もない段階での人件費の増加は営業赤字の原因になるだけです。日本の法制度ですと一回人を雇うと(特に正社員)なかなかやめさせることはできません。したがって初めのうちはある程度お客様を待たせてしまっても仕方がないくらいの気持ちで必要最小限度の人数で、もっと言えば経営者がすべて一人でやるぐらいの気概が必要です。筆者の場合も土曜、日曜以外は一人でやるように店主には伝えております。

3.飲食店で運転資金が不足する場合は???

飲食店は「現金商売」であるため、運転資金の不足というのは多くの場合すでに赤字になっている状態です。筆者としましてもこの状況で借りるのはお勧めしませんし、銀行もおそらく貸してくれるのは少ないでしょう。但し銀行の中には新規取引先を増やすために「借りるぐらいなら辞めたらいいのにな」と思いながら貸してくれる場合もあります。

ではどうしたらよいのでしょうか?具体的にはすぐに資金がショートする状態になければ運転経費、すなわち固定費と変動費の見直しからすべきです。固定費のわかりやすい例はインターネットを使っているならプロバイダー料や回線事業者の変更、家賃の交渉があります。変動費は主に材料費にになります。ここで注意すべき点は多くの場合、原価を下げるという事になるので、そのまま原価を下げただけでは商品のクオリティーも同時に下がるという事となり、お客様の満足度も下がるのでは本末転倒です。したがって何か一工夫を加えることによって、クオリティーを維持もしくは上げるぐらいの意気込みでやる必要があります。

次にもっと根本的なことになりますが、開業の時に余裕をもって融資を受けておく、もっと言えば自己資金があるから大丈夫ではなく、資金があるときにしっかり資金計画を立てて置き、十分な運転資金を確保しておくことが大切です。

さらに筆者の立場から申しますと、開業時に自己資金が十分あるからといって、開業時に安易に融資を受けない選択は反対です。自分に置き換えてみて考えてほしいのですが、例えばまったく連絡を取っていない知り合いや友人が、いきなり連絡してきて営業的な話やマイナスなお話(お金を貸してほしい等)をされたらどのように思いますか?いい感じはしないですよね。同じようにいくら仕事とは言え、今まで全く付き合いのない、業務の内容や状況、経営者の人となりや思い(経営理念や計画)を知らないお店の経営者から、資金が不足したので融資をして欲しいと言われても応じることは難しいです。

創業時にしっかりと準備をして、運転経費の見直しをしてもどうにもならない場合は「お店を閉める」ことも選択の一つかと思いますが、「絶対に続けていきたい」という強い意志がある場合は、つなぎ融資を受けることです。

創業もない(2年以内)であれば創業時同様

日本政策金融公庫(新創業融資)

制度融資(兵庫県)

この二つになると思われます。

参考リンク:飲食店を開業する時の資金はいくらかかる?どのように準備するか??

その他、補助金、助成金もありますが様々な条件(主に「人材の確保」が多いです)を満たす必要があるので中々難しいのが現状です。

参考リンク:カフェや飲食店の開業で使える補助金・助成金は?補助金で開業できる??

いずれにしましても、かなり難しい内容(金融機関は飲食店には運転資金はないという考え)のため、一人で悩まれずに早い段階で専門家に相談されるのも一つかと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。飲食店で運転資金の融資を受けることはハードルが高いのが現状です。しかしながら、しっかりとした根拠を示す(資金繰り表等)を示すことができれば絶対にできないというわけではありません。創業時のしっかりとした準備も含めて専門家や支援機関の力を借りて進めていくことをお勧めします。